正規直交化の計算方法を超分かりやすく解説しました!

正規直交化

こんにちは!krです!

前回は対角化について説明しましたが、今回はまた章が変わって、「正規直交化」というものについてやっていこうと思います。前回の記事はこちら「対角化のやり方や判別方法を分かりやすく解説!

線形写像や対角化に比べれば、かなり簡単で分かりやすい分野なので、軽い気持ちで最後まで見て頂きたいです(*’ω’*)

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目的は何?

くるる
くるる

正規直交化ってなんなんすかね~?

まず、正規直交化のイメージを掴むために、そもそも正規直交化は何をするのが目的なのかを説明します。

正規直交化という言葉ですが、これは「正規化」と「直交化」という2つが合わさって出来た言葉です。

正規化は「ベクトルの長さを1にする」こと。直交化は「2つのベクトルを直交にする」ことです。つまり、正規直交化とは

正規直交化

ベクトルの長さを全て1にして、それぞれが互いに直交になるようにすること

と言い表すことが出来ます。これを図にすると次のようなイメージになります。

この図は簡単にするために、x,y,z軸に重なるようにしていますが、一般的にはx,y,z軸に重なる必要はありません。

これが正規直交化です。イメージは掴めたでしょうか?

くるる
くるる

思ってたよりも簡単っす!

これならすぐに理解できそうだね!

ポンタ
ポンタ

正規直交化の手順

例えば、次のような3つのベクトルを正規直交化することを考えてみましょう。

$$\boldsymbol{v}_{1} = \begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{v}_{2} = \begin{bmatrix} 2 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{v}_{3} = \begin{bmatrix} 1 \\ 5 \\ 1 \end{bmatrix}$$

正規直交化すると次のようなベクトルになります。

$$\boldsymbol{u}_{1} = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{u}_{2} = \frac{1}{\sqrt{3}}\begin{bmatrix} 1 \\ -1 \\ 1 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{u}_{3} = \frac{1}{\sqrt{8}}\begin{bmatrix} -1 \\ 1 \\ 2 \end{bmatrix}$$

正規直交化は次のような手順で行います。

正規直交化の手順

ステップ1 $\boldsymbol{v}_{1}$を正規化して$\boldsymbol{u}_{1}$にする
ステップ2 $\boldsymbol{v}_{2}$を$\boldsymbol{u}_{1}$と直交なベクトル$\boldsymbol{v}_{2}’$にする
ステップ3 $\boldsymbol{v}_{2}’$を正規化して$\boldsymbol{u}_{2}$にする
ステップ4 $\boldsymbol{v}_{3}$を$\boldsymbol{u}_{1}$、$\boldsymbol{u}_{2}$と直交なベクトル$\boldsymbol{v}_{3}’$にする
ステップ5 $\boldsymbol{v}_{3}’$を正規化して$\boldsymbol{u}_{3}$にする

では1つずつ説明していきます。

ステップ1 $\boldsymbol{v}_{1}$を正規化して$\boldsymbol{u}_{1}$にする

まずは、どのベクトルを中心にして正規直交化を行うかを選びます。今回は$\boldsymbol{v}_{1} = \begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}$にしましょう。

ベクトルを正規化、つまり長さ1にするにはどうすればいいでしょうか?

そうですね。ベクトルをベクトルの大きさで割ればいいのです。なので、正規化後のベクトルを$\boldsymbol{u}_{1}$とおくと、

$$\boldsymbol{u}_{1} = \frac{1}{|\boldsymbol{v}_{1}|}\boldsymbol{v}_{1} = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}$$

これで、$\boldsymbol{v}_{1}$は正規化されて$\boldsymbol{u}_{1}$となりました。

くるる
くるる

$\boldsymbol{v}_{1}$にする作業はこれだけっす!

ステップ2 $\boldsymbol{v}_{2}$を$\boldsymbol{u}_{1}$と直交なベクトル$\boldsymbol{v}_{2}’$にする

次は、$\boldsymbol{v}_{2} = \begin{bmatrix} 2 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}$が先ほど求めた$\boldsymbol{u}_{1} = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}$と直交になるようにします。

ではどうするかと言うと、$\boldsymbol{v}_{2}$から$\boldsymbol{u}_{1}$に平行な成分を消すのです。

例えば、$\boldsymbol{v}_{2}$と$\boldsymbol{u}_{1}$が次の図のようになっていると考えましょう。

図にあるように、$\boldsymbol{v}_{2}$の$\boldsymbol{u}_{1}$に平行な成分の大きさ(注意)は$|\boldsymbol{v}_{2}|cos \theta$で表されます。

$\boldsymbol{u}_{1}$は大きさ1のベクトルなので、$|\boldsymbol{u}_{1}|$を掛けても大きさは変わりません。つまり、

$$|\boldsymbol{v}_{2}|cos \theta = |\boldsymbol{v}_{2}||\boldsymbol{u}_{1}|cos \theta $$

です。このとき、$|\boldsymbol{v}_{2}||\boldsymbol{u}_{1}|cos \theta $というのは内積の定義式でした。そのため、

$$|\boldsymbol{v}_{2}|cos \theta = \boldsymbol{v}_{2} \cdot \boldsymbol{u}_{1}$$

となり、先ほどの図は次の図のようになります。

また、$\boldsymbol{u}_{1}$は大きさ1のベクトルなので、$(\boldsymbol{v}_{2} \cdot \boldsymbol{u}_{1})\boldsymbol{u}_{1}$は「大きさ$\boldsymbol{v}_{2} \cdot \boldsymbol{u}_{1}$の$\boldsymbol{u}_{1}$方向のベクトル」になります。

すると、以下の図のようになるわけです。

$\boldsymbol{u}_{1}$と$\boldsymbol{v}_{2}’$が直交というのが重要です!

先生
先生

そして、

$$ \begin{eqnarray} \boldsymbol{v}_{2}’ &=& \boldsymbol{v}_{2}-(\boldsymbol{v}_{2} \cdot \boldsymbol{u}_{1})\boldsymbol{u}_{1} \\
&=& \begin{bmatrix} 2 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}-\frac{2}{\sqrt{2}} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix} \\
&=& \begin{bmatrix} 2 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}-\begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix} \\
&=& \begin{bmatrix} 1 \\ -1 \\ 1 \end{bmatrix} \end{eqnarray}$$

となり、$\boldsymbol{v}_{2}’$が求まります。ここで注意してほしいのですが、$\boldsymbol{v}_{2}’$はまだ直交化をしただけです。正規化はしていません。

ステップ3 $\boldsymbol{v}_{2}’$を正規化して$\boldsymbol{u}_{2}$にする

ここはステップ1と同じなので、サクッといきましょう。

$$\boldsymbol{u}_{2} = \frac{1}{|\boldsymbol{v}_{2}’|}\boldsymbol{v}_{2}’ = \frac{1}{\sqrt{3}}\begin{bmatrix} 1 \\ -1 \\ 1 \end{bmatrix}$$

ステップ4 $\boldsymbol{v}_{3}$を$\boldsymbol{u}_{1}$、$\boldsymbol{u}_{2}$と直交なベクトル$\boldsymbol{v}_{3}’$にする

ステップ2では2つのベクトルが直交するようにするだけで良かったのですが、今度は3つのベクトルが直交になるようにしなければなりません。

一見難しそうに感じるかもしれませんが、実はそんなに難しいことではありません。$\boldsymbol{v}_{3}’$は次のような式で表されます。

これによって、$\boldsymbol{v}_{3}’$は$\boldsymbol{u}_{1}$、$\boldsymbol{u}_{2}$と垂直なベクトルになります。

$\boldsymbol{v}_{3}’ = \boldsymbol{v}_{3}-(\boldsymbol{v}_{3} \cdot \boldsymbol{u}_{1})\boldsymbol{u}_{1}-(\boldsymbol{v}_{3} \cdot \boldsymbol{u}_{2})\boldsymbol{u}_{2}$

$ \quad \ = \begin{bmatrix} 1 \\ 5 \\ 1 \end{bmatrix}-\frac{6}{\sqrt{2}} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}+\frac{3}{\sqrt{3}} \cdot \frac{1}{\sqrt{3}}\begin{bmatrix} 1 \\ -1 \\ 1 \end{bmatrix}$

$ \quad \ = \begin{bmatrix} 1 \\ 5 \\ 1 \end{bmatrix}-\begin{bmatrix} 3 \\ 3 \\ 0 \end{bmatrix}-\begin{bmatrix} 1 \\ -1 \\ 1 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} -1 \\ 1 \\ 2 \end{bmatrix}$

となります。

くるる
くるる

次で最後っす!

ステップ5 $\boldsymbol{v}_{3}’$を正規化して$\boldsymbol{u}_{3}$にする

ステップ1,3と同様に計算すると、

$$\boldsymbol{u}_{3} = \frac{1}{|\boldsymbol{v}_{3}’|}\boldsymbol{v}_{3}’ = \frac{1}{\sqrt{8}}\begin{bmatrix} -1 \\ 1 \\ 2 \end{bmatrix}$$

よって、$\boldsymbol{v}_{1} = \begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{v}_{2} = \begin{bmatrix} 2 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{v}_{3} = \begin{bmatrix} 1 \\ 5 \\ 1 \end{bmatrix}$を正規化すると、$\boldsymbol{u}_{1} = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{u}_{2} = \frac{1}{\sqrt{3}}\begin{bmatrix} 1 \\ -1 \\ 1 \end{bmatrix}, \quad \boldsymbol{u}_{3} = \frac{1}{\sqrt{8}}\begin{bmatrix} -1 \\ 1 \\ 2 \end{bmatrix}$となる。

ポンタ
ポンタ

それぞれのベクトルの大きさが1で、互いに直交しているか要チェック!

今回はここまで!

最後まで見て頂きありがとうございました!

先生
先生
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