こんにちは!krです!
今回は「偶関数と奇関数におけるフーリエ級数展開」を解説していきます。
なぜ「偶関数と奇関数」という特定の関数についてわざわざ解説するのかというと、一言で言えば「計算がめちゃくちゃ楽!」だからです。
フーリエ級数展開について知りたい方は「フーリエ級数展開の概要をサクッと解説!」をご覧ください。
偶関数・奇関数とは?
まずは偶関数と奇関数とは何者かを解説しましょう。知っている方は軽い復習のつもりで。
偶関数は「グラフが$y$軸に関して対称な関数」
奇関数は「グラフが原点に関して対称な関数」
です。例として、$y=cosx$は偶関数、$y=sinx$は奇関数です。グラフを見てみましょう。


確かに偶関数は$y$軸に対して対称で、奇関数は原点に対して対称っすね~!
また、
偶関数×偶関数=偶関数
偶関数×奇関数=奇関数
奇関数×奇関数=偶関数
という性質があり、これは偶関数を$x^2$、奇関数を$x^3$で考えてみるとすぐに分かると思います。
偶関数・奇関数の積分の重要な性質
例えば、$\displaystyle \int_{-\pi}^{ \pi } f(x) dx$という積分を考えましょう。$f(x)$が偶関数のときと奇関数のときの積分値は次のようになります。

これは実際に$y=cosx$と$y=sinx$を$-\pi~\pi$で積分すれば簡単に分かります。
この性質が今回の最大のポイントです!

偶関数・奇関数のフーリエ級数展開
それでは、偶関数・奇関数をフーリエ級数展開するとどうなるかを考えてみましょう。
フーリエ級数展開は次のような流れでした。

つまり、フーリエ係数を求めればフーリエ級数展開は終わったも同然です。
ということでまずは、フーリエ係数を求めなければなりません。フーリエ係数の公式は次の通りです。(ここでは簡単のため周期$2\pi$の関数に限定します)

ここ注目してほしいんですけど、$cosnx$は偶関数、$sinnx$は奇関数ですよね?
で、今は偶関数と奇関数のフーリエ級数展開を考えてるんで、$f(x)$は偶関数か奇関数ですよね?
ということは?

さっきの「偶関数・奇関数の積分の重要な性質」が使えるってことだね!
その通り!

$f(x)$が偶関数のとき、奇関数のときをそれぞれ見てみましょう。
偶関数のとき
$f(x)$が偶関数であれば、「偶×偶=偶」、「偶×奇=奇」の関係より、フーリエ係数は次のようになります。


$b_n$が消えちゃったっす!
このフーリエ係数をフーリエ級数の一般式に当てはめると、
$$f(x) = \frac{a_0}{2} + \displaystyle \sum_{i=1}^\infty a_n cosnx$$
となりました。このフーリエ級数のことを「$cos$だけのフーリエ級数」という意味から「フーリエ余弦級数」と言います。
奇関数のとき
$f(x)$が奇関数であれば、「奇×偶=奇」、「奇×奇=偶」の関係より、フーリエ係数は次のようになります。


今度は$a_n$が消えちゃったよ!
このフーリエ係数をフーリエ級数の一般式に当てはめると、
$$f(x) = \displaystyle \sum_{i=1}^\infty b_n sinnx$$
となりました。このフーリエ級数のことを「$sin$だけのフーリエ級数」という意味から「フーリエ正弦級数」と言います。
このように、「偶関数・奇関数のフーリエ級数展開」は普通よりも簡単に求めることが出来るのです。

偶関数・奇関数への拡張
こんなに簡単にフーリエ級数展開を求めることが出来るのであれば、それを利用しない手はありません。
そのために、関数を偶関数・奇関数へ「拡張」してフーリエ級数を求めるという方法が開発されました。
例えば、$y=-x+\pi \quad (0 \leq x \leq \pi)$という関数を考えてみましょう。グラフは次のようになります。

ここで、$y=x+\pi \quad (-\pi \leq x \lt 0)$という関数を新たに定義すると、次のようなグラフになります。

このように、与えられた関数に加え、新たな関数を定義することで、偶関数・奇関数の関数を作ることを「拡張」といいます。
今回の例の関数は偶関数になるので、

より、$a_n$を求めればいいだけになるのです。
これが偶関数・奇関数への拡張です。

まとめ
今回の内容を簡単にまとめておきます。フーリエ正弦級数・余弦級数はテストでも結構狙われるところなので、しっかりとマスターしておきましょう!
・偶関数 = グラフが$y$軸に対して対称な関数
奇関数 = グラフが原点に対して対称な関数
・$f(x)$が偶関数のとき
$$\displaystyle \int_{-\pi}^{ \pi } f(x) dx = \frac{1}{2} \displaystyle \int_{-\pi}^{ \pi } f(x) dx$$
$f(x)$が奇関数のとき
$$\displaystyle \int_{-\pi}^{ \pi } f(x) dx = 0$$
・フーリエ余弦級数 = $cos$だけのフーリエ級数
フーリエ正弦級数 = $sin$だけのフーリエ級数
・偶関数 = グラフが$y$軸に対して対称な関数
奇関数 = グラフが原点に対して対称な関数
・$f(x)$が偶関数のとき
$$\displaystyle \int_{-\pi}^{ \pi } f(x) dx = \frac{1}{2} \displaystyle \int_{-\pi}^{ \pi } f(x) dx$$
$f(x)$が奇関数のとき
$$\displaystyle \int_{-\pi}^{ \pi } f(x) dx = 0$$
・フーリエ余弦級数 = $cos$だけのフーリエ級数
フーリエ正弦級数 = $sin$だけのフーリエ級数