こんにちは、krです。今回は

解のパターンが色々あってよくわからないなぁ…
と連立方程式に苦戦している方のために、「連立方程式の解の3パターン(解あり、任意の解、解なし)」をそれぞれ分かりやすく解説します!
ついでに同次形の連立方程式の解法も最後に説明しているので良かったらご覧ください。
連立方程式の解の3パターン
連立方程式の解には以下の3パターンがあります。
今までは、普通に解が出るパターン以外の連立方程式に出会ったことは少ないと思いますが、線形代数では「任意の解」と「解を持たない」というパターンが結構出るので、必ず理解しておきましょう。
順番に説明します!

普通に解を持つパターン
まずは「普通に解を持つ」パターンです。これは普通の連立方程式で、何も難しくはありませんね。例えば、次のような連立方程式を考えてみましょう。
$$\begin{bmatrix} 1 & 2 \\ 2 & 3 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1 \\ 3 \end{bmatrix}$$
拡大係数行列を作って、掃き出し法でこれを解くと次のようになります。

よって$x_1 = 3$、$x_2=-1$と求まりました。これが「普通に解が出る」パターンです。
任意の解を持つパターン
次は「任意の解を持つ」パターンです。次のような連立方程式を考えましょう。
$$\begin{bmatrix} 1 & 2 & 1\\ 2 & 3 & 1\end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1 \\ 3 \end{bmatrix}$$
少し難しいですが、頑張りましょう!

まずは先ほどと同じように拡大係数行列を作り、掃き出し法で解きましょう。

さて最後の行列を見ると、いつもは左側が単位行列になっているのに、今回は単位行列になっていませんね。これを方程式に直すとこんな状況になります。

どうやら普通の解は持っていなさそうです。どうすれば解を求めることが出来そうでしょうか?
答えは「$x_{3}$を任意の定数$c$と置く」です。任意とは「何でもいい」という意味で、$x_{3}$が求まらないから適当に任意の定数$c$と置いちゃおう!ってことですね。そうすれば、
$$\begin{eqnarray} x_{1} &=& 3+c \\
x_{2} &=& -1-c \\
x_{3} &=& c \end{eqnarray}$$
と求まります。このままの形でもいいのですが、線形代数では次のように答えを行列で書くことが多いです。


なんとなく分かったっす!
任意定数の決め方
先ほどは$x_{3}$を$c$と置きましたが、なぜ$x_{3}$を選んだのか分かりますか?
正解は「主成分じゃないから」です!
主成分というのは、各行の0を除いた最初の数字のことです。つまりこういうことです。今回の例ではどちらも主成分は$1$ですが、$1$じゃないと主成分と言わないわけではないです。

これを見ると、$x_{3}$だけが主成分ではありませんね。そのため$x_{3}$を$c$と置いたのです。何となく分かるかと思いますが、$x_{3}$が分かれば他の3つの変数を求めることが出来ますよね?
任意の定数にするのは「主成分じゃないもの」
では次のような場合どれを任意の定数と置けばいいでしょうか?

これは少し難しいですが、まず、赤丸で囲った$x_1,x_3,x_4$が主成分ですね。

そして、「主成分じゃない」ものを任意の定数とすればいいわけですから、$x_{2} = c_{1}$、$x_{5} = c_{2}$と置くのがいいでしょう。ええそうです、任意の定数は1つだけとは限らないのです。
「主成分じゃない」ものを任意の定数にするということが理解できたでしょうか?

解を持たないパターン
さて3つ目の「解をもたない」パターンです。
簡単な例
簡単な例から紹介しましょう。以下のような連立方程式は明らかに矛盾していることが分かると思います。本当なら$x_1 – x_2 = \frac{3}{2}$か$2x_1 – 2x_2 = 4$になっていなければいけません。
$$\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -2 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 2 \\ 3 \end{bmatrix}$$
この連立方程式を掃き出し法で解いてみましょう。

すると、このように2行目の左側が全て0になってしまいました。つまり$0 = -1$という明らかに矛盾している式が出来てしまうのです。
こんな感じに、元の連立方程式に矛盾が含まれているとき、行列で解いた場合にも$0 = -1$のような矛盾した式が出てくるのです。
そして、矛盾している連立方程式を満たす解があるわけないですよね。つまり、「解なし」です。
連立方程式に矛盾があれば「解はない」
もう少し難しい例を見てみましょう。
難しい例
次のような連立方程式は一見矛盾などありそうには見えません。
$$\begin{bmatrix} 1 & -2 & -1 & 2 \\ 1 & -4 & -5 & 4 \\ 2 & -3 & 0 & 3 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \\ x_4 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1 \\ 3 \\ 2\end{bmatrix}$$
しかし、実際に解いてみると…

このように2行目に$0 = 2$という矛盾した式が出てきてしまいました。つまり、元の連立方程式は矛盾しており、「解を持たない」ということです。
この例のように、一見普通に解けそうなのに実は矛盾が含まれているということがあるので要注意です。

同次形の連立方程式
最後に同次形の連立方程式を紹介しましょう。
同次形の連立方程式には他の連立方程式とは圧倒的に異なる特徴があります。それは「自明な解」を持つということです。
自明な解
同次形とは$A \boldsymbol{x} = \boldsymbol{0}$のように右辺が$\boldsymbol{0}$になっている連立方程式です。ちなみに$A \boldsymbol{x} = \boldsymbol{0}$は以下のような意味です。

この連立方程式って、$$ \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \end{bmatrix}$$が明らかに解になりますよね?
この解のことを「同次形の連立方程式において明らかに成り立つ解」という意味から「自明な解」といいます。
これが他の連立方程式とは異なる最大の特徴です。
同次形の連立方程式は「自明な解」を持つ
非自明な解
同次形連立方程式は、「自明な解」を持つこと以外は普通の連立方程式と同じなのですから、もちろん「非自明な解」=「普通の解」も存在します。
ただ、同次形の連立方程式は解くときに少しポイントがあるのです。例えば、下図のような連立方程式を考えましょう。
$$\begin{bmatrix} 1 & 2 & 1\\ 2 & 3 & 1\end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0 \\ 0 \end{bmatrix}$$
これを今まで通りのやり方で解いてみると、

という風になるのですが、右側の部分ずっと0ですよね?ってことは別に書かなくても良くないですか?つまり、左辺の行列だけを簡約化してしまえばいいのです。

したがって、次のようなことが言えます。
同次形の連立方程式を解くときは「右辺の0を書かなくても良い」
そして、$x_{3} = c$とおけば、この行列の非自明な解は、
$$\boldsymbol{x} = \begin{bmatrix} -c \\ -c \\ c \end{bmatrix} = c\begin{bmatrix} -1 \\ -1 \\ 1 \end{bmatrix}$$
と求まります。
まとめ
今回は「連立方程式の解の3パターン(解あり、任意の解、解なし)」と「同次形の連立方程式」について解説しました。
ここで説明したことは間違いなくテストに出るので、しっかりと理解しておきましょう。
お疲れ様でした!

・「普通に解を持つパターン」
・「任意の解を持つパターン」
・「解を持たないパターン」