まずは連立方程式の説明をしましょう。
目次
行列の連立方程式とは
連立方程式と言えば、以下の図のようなイメージがパッと思いつくでしょう。

この連立方程式を次のように行列に変換してしまいます。

この行列からどのように元の連立方程式に戻すのかを説明します。
まず左辺を計算してみましょう。行列の掛け算は、左側の行列を横向きに、右側の行列を縦向きに掛けていくのですから、

このように3行1列の行列が生成されます。そうすると次のようにどちらも3行1列の行列であるので、行列の比較ができ、元の連立方程式が求まります。

行列での連立方程式の表記というのが、中々に不思議な形をしているので最初は戸惑うかもしれませんが、「こういう書き方をするんだ!」とある程度割り切った方がよろしいかと思います。実際別にそんなに深い意味はありません。
これから連立方程式を解く問題はこの行列の形で出題されますので、元の連立方程式がどういう形なのか分かるようにしておいてくださいね!
連立方程式の解は3パターンある
連立方程式の解の出方は以下の3パターンです。
・「普通に解が出るパターン」
・「任意の解が出るパターン」
・「解をもたないパターン」
今までは、普通に解が出るパターン以外の連立方程式に出会ったことは少ないと思いますが、これからは「任意の解」と「解がない」というパターンも考えていかなくてはなりません。
普通に解が出るパターン
まずは普通に解が出るパターンで、今まで見てきたような連立方程式と一緒です。例えば、先ほど出てきたこの行列で考えてみましょう。

これを解くと以下のようになります。

よって$x = 1$、$y = \frac{2}{3}$、$z = -\frac{1}{3}$と求まりました。これが「普通に解が出る」パターンです。
任意の解が出るパターン
次は任意の解が出るパターンです。


少し難しいですが、頑張ってついてきてください!
まずは先ほどと同じように拡大係数行列を作り、簡約化しましょう。

さて最後の行列を見てもらうと分かると思いますが、いつもは左側が単位行列になっているのに、今回はそうなっていません。これを方程式に直すとこんな状況になります。

どうやら普通の数値の解は出なさそうですね。どうすれば解を求めることが出来そうでしょうか?
答えは「$x_{4}$をある任意の定数$C$とおく」です!任意とは「何でもいい」という意味です。$x_{4}$が求まらないからとりあえず任意の定数$C$と置いちゃおう!ってことです。そうすれば、
$$x_{1} = \frac{3}{2}$、$x_{2} = -\frac{3}{2} + C$、$x_{3} = \frac{7}{2} – 2C$、$x_{4} = C$$
と求まります。このままの形でもいいのですが、線形代数では次のように答えを行列で書いたりします。

ほとんどの場合、このような解答の書き方をするので、ぜひ覚えておいてください!
任意定数の決め方
先ほどは$x_{4}$を$C$と置きましたが、なぜ$x_{4}$を選んだのかは分かりますでしょうか?
正解は「主成分じゃないから」です!
主成分というのは、各行の0を除いた最初の数字のことです。つまりこういうことです。

今、4列目の$x_{4}$にあたる部分だけが主成分ではありません。そのため$x_{4}$を$C$と置いたのです。何となく分かるかと思いますが、$x_{4}$が分かれば他の3つの変数を求めることが出来ますよね?
では次のような場合どれを任意の定数と置けばいいでしょうか?

これは少し難しいかもしれませんが、「主成分じゃない」ものを任意の定数とすればよいのですから、ここでは$x_{2} = C_{1}$、$x_{4} = C_{2}$と置くのがいいでしょう。ええそうです、任意の定数は1つだけとは限らないのです。
こんな感じで任意の定数は「主成分じゃない」ものに置くということが理解できたでしょうか?
解をもたないパターン
さて3つ目の「解をもたない」パターンです。
簡単な例
簡単な例から紹介しましょう。以下のような連立方程式は明らかに矛盾していることが分かると思います。本当なら$2x – 2y = 4$になっていなければなりません。
$$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x – y = 2 \\ 2x – 2y = 3 \end{array} \right. \end{eqnarray}$$
この連立方程式を行列を用いて解いてみましょう。

すると、このように2行目の左側が全て0になってしまいました。つまり$0 = -1$という明らかに矛盾している式が出来てしまうのです。
こんな感じに、元の連立方程式に矛盾が含まれているとき、行列で解いた場合にも$0 = -1$のような矛盾した式が出てくるのです。そして、矛盾している連立方程式はそれを満たす解があるはずもありません。
これが「解をもたない」という意味です。もう少し難しい例を見てみましょう。
難しい例
次のような連立方程式は一見矛盾などありそうには思えません。

しかし、実際に解いてみると…

このように3行目に$0 = 2$という矛盾した式が出てきてしまいました。つまり、元の連立方程式は矛盾しており、「解をもたない」ということです。
この例のように、ぱっと見は普通に解けそうな連立方程式に見えても実は矛盾が含まれているということがあるのです。
同次形の連立方程式
最後に同次形の連立方程式を紹介しましょう。同次形の連立方程式には他の連立方程式とは圧倒的に異なる特徴があります。それは「自明な解」を持つということです。
自明な解
同次形とは$A\mathbf{x} = \mathbf{0}$のように右辺が0になっている連立方程式と思ってください。ちなみに$A\mathbf{x} = \mathbf{0}$は以下のような意味です。

この$A\mathbf{x} = \mathbf{0}$という式、$\mathbf{x} = \mathbf{0}$が明らかに解になるのは分かりますでしょうか?このように同次形の連立方程式における$\mathbf{x} = \mathbf{0}$という明らかに成り立つ解のことを「自明な解」といいます。
これが他の連立方程式とは異なる最大の特徴です。
非自明な解
同次形連立方程式は、「自明な解」を持つこと以外は普通の連立方程式と同じなのですから、もちろん「$\mathbf{x} = \mathbf{0}$ではない解」=「非自明な解」も存在します。
ただ、同次形の連立方程式は解くときに少しポイントがあるのです。例えば、下図のような連立方程式を考えましょう。

これを今まで通りのやり方で解いてみると、

という風になるのですが、右側の部分ずっと0ですよね?ってことは別に書かなくても良くないですか?つまり、左辺の行列だけを簡約化してしまえばいいのです。

これが同次形の連立方程式を解くときのポイントで「右辺の0は無視する」です!
そして、$x_{4} = C$とおけば、この行列の非自明な解は、
$$\boldsymbol{x} = \begin{bmatrix} 0 \\ C \\ -2C \\ C \end{bmatrix} = C\begin{bmatrix} 0 \\ 1 \\ -2 \\ 1 \end{bmatrix}$$
と求まります。今回はここまで!

最後まで読んでくれてありがとよ!
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