ローラン展開を簡単に解説!【なんとなくわかる複素解析】

ローラン展開
この記事のまとめ

・ローラン展開は「関数を正のべき乗と負のべき乗の和になるように展開すること」

・ローラン展開は「展開の中心が特異点(関数が変な値になる点)でも良いし、特異点じゃなくても良い」

・ローラン展開の導出で一番重要なのは「コーシーの積分公式」

・ローラン展開はテイラー展開やマクローリン展開を利用して関数を展開する

ローラン展開の簡単な説明

ポンタ
ポンタ

ローラン展開は何をしているのかがいまいち分からないなぁ

簡単に説明しましょう!

先生
先生

ローラン展開とは簡単に言えば、「関数を正のべき乗と負のべき乗の和になるように展開すること」です。例えば、関数$f(z)$を$f(z)=z^2+z+\frac{1}{z}+\frac{1}{z^2}$という形に展開したとすれば、これはローラン展開をしたのだと言えます。

ローラン展開の前に、テイラー展開を勉強されたと思いますが、複素関数のテイラー展開は「展開の中心で関数が正則」である必要があります。

一方、ローラン展開は「展開の中心が特異点(関数が変な値になる点)でも良いし、特異点じゃなくても良い」というものです。

つまり、ローラン展開はテイラー展開の概念を拡張したものなのです。

ローラン展開もテイラー展開みたいに公式を使って求めるんですか?

実はローラン展開の仕方はテイラー展開とはかなり違うのです。

先生
先生

ローラン展開にも一応公式みたいなものはあるにはありますが、実はそれを使うことはほぼありません。なので、「テイラー展開みたいなもんかな~~」と考えていると良く分からなくなると思うので、一旦テイラー展開は忘れましょう。詳しくは後述します。

とりあえず、以上がローラン展開の簡単な説明です。次にローラン展開の公式とその導出仮定を説明します。

ローラン展開の導出をザックリ説明

教科書ではローラン展開について以下のような説明がなされていると思います。

ローラン展開

図のような円環領域$D$で関数$f(z)$が正則なら、$f(z)$は

$$f(z)=\displaystyle \sum_{n=-\infty}^{\infty} c_n(z-a)^n$$

って式に展開できるで~^^。ちなみに、$c_n$は次のような式な。

$$c_n = \frac{1}{2\pi i}\displaystyle \int_{C} \frac{f(w)}{(w-a)^{n+1}} dw$$

まぁこんな感じの説明がされていると思います。詳しい定義は自分の使っている教科書を見てもらえればと思います。

この記事では厳密な証明はしません。重要なところだけを絞って分かりやすく解説していきます。

先生
先生

$f(z)$と$c_n$の式の導出を3ステップで説明します。

ステップ1 コーシーの積分公式を考える

ローラン展開で一番重要なのは「コーシーの積分公式」で、導出もコーシーの積分公式からスタートします。そのため、ここを理解しないとローラン展開は理解できません。

コーシーの積分公式についてあまり理解できていない人は、まず以下の記事を読みましょう。

コーシーの積分公式

コーシーの積分公式を分かりやすく解説!【なんとなくわかる複素解析】

さて、コーシーの積分公式は「閉曲線$C$の内部に特異点がある場合の閉曲線$C$に沿った線積分」を求めることが出来るという公式で、次のような式で表されます。

$$\displaystyle \int_{C} \frac{f(z)}{z-a} dz = 2 \pi if(a)$$

この公式を無理やり日本語に直すと、「閉曲線$C$の内部に特異点$a$がある場合、関数$\frac{f(z)}{z-a}$の閉曲線$C$に沿った線積分の値は、$2\pi f(a)$になる」という感じです。

閉曲線$C$や$z,a$は次の図のようになってます。関数$f(z)$は閉曲線$C$の内部で正則とします。

コーシーの積分公式はとにかく「内部に特異点がある場合の$C$に沿った線積分は$2 \pi if(a)$になる」というのがポイントです。

では、ここで、$a \rightarrow z, z \rightarrow w$に置換しましょう。これはこれからの議論を分かりやすくするために記号を変えているだけで、それ以上の意味はありません。

$$\displaystyle \int_{C} \frac{f(w)}{w-z} dw = 2 \pi if(z)$$

これに伴って、先ほどの図は次の図に変化します。関数$f(w)$は閉曲線$C$の内部で正則です。

ここまではよろしいでしょうか?

先生
先生
くるる
くるる

う~ん。難しいっすねぇ…

ステップ2 コーシーの積分公式を利用する

ステップ1のコーシーの積分公式を利用します。公式は次のようなものでした。

$$\displaystyle \int_{C} \frac{f(w)}{w-z} dw = 2 \pi if(z)$$

さて、次の図のように、閉曲線$C$の外部に特異点$a$があるとします。この点において$f(w)$がおかしな値を取るわけです。

この特異点$a$を包み込むように閉曲線$C$を伸ばして変形します。「$z$の位置がおかしくない?」と思うかもしれませんが、一旦無視しましょう。

この図は閉曲線を変形しただけなので、赤色の部分では関数$f(w)$は正則です。なので、コーシーの積分公式より、

$$\displaystyle \int_{C_1+L-C_2-L} \frac{f(w)}{w-z} dw = 2 \pi if(z)$$

という式が成り立ち、$C_1$と$C_2$を繋げている部分の線積分は打ち消し合うので、

$$\displaystyle \int_{C_1-C_2} \frac{f(w)}{w-z} dw = 2 \pi if(z)$$

となります。この式は「関数$\frac{f(w)}{w-z}$の閉曲線$C_1-C_2$に沿った線積分の値は、$2\pi f(z)$になる」ということを言っているだけの式です。ここまでは割と当たり前の話ですよね?

ここから少し難しくなります!

先生
先生

さて、先ほどの式を$f(z)$の式になるように変形すると、

$$\begin{eqnarray}f(z) &=& \frac{1}{2 \pi i} \displaystyle \int_{C_1-C_2} \frac{f(w)}{w-z} dw \\ &=& \frac{1}{2 \pi i} \displaystyle \int_{C_1} \frac{f(w)}{w-z} dw-\frac{1}{2 \pi i} \displaystyle \int_{C_2} \frac{f(w)}{w-z} dw \end{eqnarray}$$

という式が求まります。このとき、先ほどの図は次のような図に変わっており、式の意味も「領域$D$のある点$z$における$f(w)$の値$f(z)$を求めることが出来る式」という意味に変わっています。

そして、先ほどの「$z$の位置がおかしくない?」の件ですが、点$z$は$\frac{f(w)}{w-z}$の特異点であるため、$z$は領域$D$内の点ならどこでもいいのです。ただし、$a$は$C_1,C_2$の基準点になっているので、動いちゃダメです。

ステップ3 ステップ2の結果の式を変形する

ステップ2より、

$$f(z) = \frac{1}{2 \pi i} \displaystyle \int_{C_1} \frac{f(w)}{w-z} dw-\frac{1}{2 \pi i} \displaystyle \int_{C_2} \frac{f(w)}{w-z} dw $$

という式が求まり、これをゴリゴリ変形していくわけですが、ローラン展開を理解するうえではあまり重要ではないため、この記事では詳しい計算は説明せずに結果だけを使います。

さて、上の式の右辺の2項は計算すると、実は次のような式になるのです。

$$\frac{1}{2 \pi i} \displaystyle \int_{C_1} \frac{f(w)}{w-z} dw = \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} c_n(z-a)^n$$

$$\frac{1}{2 \pi i} \displaystyle \int_{C_2} \frac{f(w)}{w-z} dw = -\displaystyle \sum_{n=-\infty}^{-1} c_n(z-a)^n$$

つまり、次のような式になり、これはまさに求めようとしていたローラン展開の式になっています。

$$\begin{eqnarray}f(z) &=& \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} c_n(z-a)^n+\displaystyle \sum_{n=-\infty}^{-1} c_n(z-a)^n \\ &=& \displaystyle \sum_{n=-\infty}^{\infty} c_n(z-a)^n \end{eqnarray}$$

ただし、$c_n = \frac{1}{2\pi i} \displaystyle \int_{C} \frac{f(w)}{(w-a)^{n+1}} dw$

これがローラン展開の公式のザックリとした導出です。

ローラン展開とテイラー展開の違い

さて、冒頭で述べたように、ローラン展開の仕方はテイラー展開とはかなり違います。

テイラー展開は公式を使って関数を級数に展開するというものでしたが、ローラン展開の公式は「展開したらこんな形になりますよ」と言っているだけで、実際にその公式を使って級数に展開することはほぼありません。できなくはないですが、難しいのです。

ではどうやってローラン展開をするのかというと、テイラー展開やマクローリン展開を利用するのです。

意味が分からないと思うので、次のような例題を考えましょう。

以下の関数を$z=0$を中心にローラン展開しなさい。

$$\frac{e^z}{z}$$

解答

$e^z$をマクローリン展開すると($e^z$のマクローリン展開は有名なので、もはや公式みたいになってます)、

$$e^z=1+\frac{z}{1!}+\frac{z^2}{2!}+ \cdots +\frac{z^n}{n!}+ \cdots$$

であるから、

$$\frac{e^z}{z}=\frac{1}{z}+1+\frac{z}{2!}+ \cdots +\frac{z^{n-1}}{n!}+ \cdots$$

これで$\frac{e^z}{z}$のローラン展開が出来ました。この例から分かる通り、ローラン展開には特別な公式は必要ないのです。テイラー展開やマクローリン展開を使えば、ローラン展開が出来るのです。

ローラン展開の問題を解いていると、「あれ?マクローリン展開ばっかり使ってて、ローラン展開の公式とか全然使ってなくね?」と思うと思いますが、それでいいのです。

そのため、ローラン展開の問題はテイラー展開やマクローリン展開が出来るかが大事というわけです!

先生
先生

この記事のまとめ

・ローラン展開は「関数を正のべき乗と負のべき乗の和になるように展開すること」

・ローラン展開は「展開の中心が特異点(関数が変な値になる点)でも良いし、特異点じゃなくても良い」

・ローラン展開の導出で一番重要なのは「コーシーの積分公式」

・ローラン展開はテイラー展開やマクローリン展開を利用する

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