【線形代数】基底・次元とは?

基底と次元

こんにちは、krです。今回は

基底に次元って意味が分からんわ~~!!!

と怒り狂っている方たちに向けて、「基底と次元」を分かりやすく解説します。

なお、基底と次元を理解するには「ベクトル空間」と「一次独立・一次従属」に関する知識が必要不可欠です。まだあまり理解できていない方は先に以下の記事をご覧ください。

ベクトル空間
一次独立・一次従属

基底

基底は簡単に言えば「ベクトル空間全体を表すのに必要なベクトルの組」です。

例えば、$xyz$空間の全てのベクトルは単位ベクトル$\hat{\boldsymbol{x}}, \hat{\boldsymbol{y}},\hat{\boldsymbol{z}}$の3つを使うことで表すことができます。こんな感じに。

$$(3, 2, 5) = 3\hat{\boldsymbol{x}} + 2\hat{\boldsymbol{y}} + 5\hat{\boldsymbol{z}}$$

$$(-2, 0, 4) = -2\hat{\boldsymbol{x}} + 0\hat{\boldsymbol{y}} + 4\hat{\boldsymbol{z}}$$

なので、単位ベクトル$\hat{\boldsymbol{x}}, \hat{\boldsymbol{y}},\hat{\boldsymbol{z}}$は$xyz$空間というベクトル空間の「基底」です。

ポンタ
ポンタ

なるほど、なるほど。

少し難しい話

図のようにベクトル$\{\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}, \boldsymbol{a}_{4}, \boldsymbol{a}_{5}, \boldsymbol{a}_{6}\}$を元として持つベクトル空間$V$があるとします。

$\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}$は一次独立であるとして、$\boldsymbol{a}_{4},\boldsymbol{a}_{5},\boldsymbol{a}_{6}$の3つのベクトルが

$$\boldsymbol{a}_{4} = \boldsymbol{a}_{1} + \boldsymbol{a}_{2}$$

$$\boldsymbol{a}_{5} = \boldsymbol{a}_{2} + \boldsymbol{a}_{3}$$

$$\boldsymbol{a}_{6} = \boldsymbol{a}_{3} + \boldsymbol{a}_{1}$$

という式で表されるとすると、

と書き換えられますね。

これは、ベクトル空間$V$の全ベクトルを表すには$\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}$の3つがあれば良いということを表しています。

つまり、$\{\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}\}$がベクトル空間$V$の「基底」ってことです。

くるる
くるる

うっ…!ちょっと難しくなってきたっすね…

焦らず時間をかけて理解しましょう!

先生
先生

なぜ$\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}$は1次独立である必要があるのか?

$\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}$が1次独立でないってことは、

$$\boldsymbol{a}_{3} = \boldsymbol{a}_{1} + \boldsymbol{a}_{2}$$

のように、あるベクトルを他のベクトルの一次結合で表すことが出来るってことです。この場合基底は$\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}$になっちゃいます。

でも、今は$\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}$が基底であってほしいのです。

だから、「$\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}$は1次独立である」と書いているわけですね。

基底のイメージ

基底をイメージするのは中々慣れてないと難しいですが、例えるならば「原子」みたいなイメージでしょうか。

原子って物質を構成する最小単位で、それ以上分けることのできないものですよね。(陽子とか中性子とかは今は無視しましょう(笑))

それと同じで、「基底」ってベクトル空間$V$を構成する最小単位で、それ以上分けることのできないものなんです。

まとめると

今まで書いてきたことをまとめると、ベクトル空間$V$の任意のベクトルが、$V$に含まれる一次独立なベクトル$\{\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \cdots ,\boldsymbol{a}_{n}\}$を使って、

$V$の任意のベクトル $= c_{1}\boldsymbol{a}_{1} + c_{2}\boldsymbol{a}_{2} +・・・+ c_{n}\boldsymbol{a}_{n}$

という一次結合で表されるとき、$\{\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \cdots ,\boldsymbol{a}_{n}\}$のことをベクトル空間$V$の「基底」と言います。

次は次元について説明します!

先生
先生

次元

次元は「基底のベクトルの数」です。

例えば、あるベクトル空間$V$の基底が$\{\boldsymbol{a}_{1}, \boldsymbol{a}_{2}, \boldsymbol{a}_{3}\}$の場合、次元は「3」です。

次元は英語で「dimension」なので、

$$dim(V)=3$$

と書きます。

次元のイメージ

多くの人は2次元を「平面」、3次元を「空間」というように考え、「次元」を「縦・横・高さ」に対応するものとして捉えていると思います。

しかし、これはあくまでも次元を幾何学的に考えた場合です。

幾何学的イメージでは4次元以降がイメージできないので、線形代数では「次元は基底のベクトルの数」という理解だけをするようにしましょう。

幾何学的な意味は関係ありません。基底のベクトルの数が$3$なら、次元は$3$なんです。それだけです。

例題

例題1

例題1

次のベクトル空間$W$の基底と次元を求めよ。

$$W = \{ \boldsymbol{x} \in \boldsymbol{R^3} \mid x_{1}+2x_{2}-3x_{3}=0\}$$

問題の意味を解説

$W$の式は「$x_{1}+2x_{2}-3x_{3}=0$を満たす$\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix} x_{1} \\ x_{2} \\ x_{3} \end{pmatrix}$の集合を$W$とする」という意味です。

そして、その$W$全体を表すのに必要なベクトル(基底)は何で、いくつ(次元)あるのかという問題です。

例えば、

$$\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix} c_{1} \\ c_{2} \end{pmatrix}$$

の場合、$W$は$\begin{pmatrix} 1 \\ 2 \end{pmatrix}$や$\begin{pmatrix} 3 \\ 5 \end{pmatrix}$などの実2次数ベクトルの集合です。

このとき、

$$\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix} c_{1} \\ c_{2} \end{pmatrix}=c_{1}\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}+c_{2}\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$$

であることから、$W$のベクトルは全て$\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$と$\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$から作れることが分かります。

なので、$W$の基底は$\left\{ \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} \right\}$であり、次元は$2$となるのです。

解答

$x_{2}=c_1, x_{3}=c_{2} \ (c_{1}, c_{2} \in \boldsymbol{R})$とすると、$x_{1}=-2c_{1}+3c_{2}$と書けるので、

$$\begin{eqnarray} \boldsymbol{x} &=& \begin{pmatrix} -2c_{1}+3c_{2} \\ c_{1} \\ c_{2} \end{pmatrix} \\
&=& c_{1}\begin{pmatrix} -2\\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}+c_{2}\begin{pmatrix} 3 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \end{eqnarray}$$

より、基底は$\left \{ \begin{pmatrix} -2\\ 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 3 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \right \} $で、次元は$2$

例題2

例題2

次のベクトル空間$W$の次元と基底を求めよ。

$$W = \begin{eqnarray} \left\{ \boldsymbol{x} \in \boldsymbol{R}^5 \ \middle| \ \begin{array}{l} x_{1} + 3x_{2} – 2x_{3} + 4x_{4}= 0 \\ 3x_{1} – x_{2} – 4x_{3} + x_{4} = 0 \end{array} \right\} \end{eqnarray}$$

問題の意味を解説

この問題、一見何をやれば良いのか良く分かりませんが、結局は2本の式を満たす$\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix} x_{1} \\ x_{2} \\ x_{3} \\ x_{4} \\ x_{5} \end{pmatrix}$を求めればいいだけです。

じゃあ連立方程式の解はどうやって求めるかといったら、「簡約化」ですよね。

解答

係数行列を作り、簡約化すると、

$$\begin{eqnarray} \begin{pmatrix} 1 & 3 & -2 & 4 \\ 3 & -1 & -4 & 1 \end{pmatrix} & \rightarrow & \begin{pmatrix} 1 & 3 & -2 & 4 \\ 0 & -10 & 2 & -11 \end{pmatrix} \\
& \rightarrow & \begin{pmatrix} 1 & 3 & -2 & 4 \\ 0 & 1 & -\frac{1}{5} & \frac{11}{10} \end{pmatrix} \\
& \rightarrow & \begin{pmatrix} 1 & 0 & -\frac{7}{5} & \frac{7}{10} \\ 0 & 1 & -\frac{1}{5} & \frac{11}{10} \end{pmatrix} \end{eqnarray}$$

$x_{3} = c_{1}, x_{4} = c_{2} \ (c_{1}, c_{2} \in \boldsymbol{R}) $とおくと、

$$\begin{eqnarray} \boldsymbol{x} &=& \begin{pmatrix} \frac{7}{5}c_{1} – \frac{7}{10}c_{2} \\ \frac{1}{5}c_{1} – \frac{11}{10}c_{2} \\ c_{1} \\ c_{2} \end{pmatrix} \\
&=& \frac{1}{5}c_{1} \begin{pmatrix} 7 \\ 1 \\ 5 \\ 0 \end{pmatrix} – \frac{1}{10}c_{2} \begin{pmatrix} 7 \\ 11 \\ 0 \\ -10 \end{pmatrix} \end{eqnarray}$$

よって、基底は$\left\{ \begin{pmatrix} 7 \\ 1 \\ 5 \\ 0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 7 \\ 11 \\ 0 \\ -10 \end{pmatrix} \right\}$で、次元は2。

まとめ

今回は「基底と次元」について解説しました。

基底と次元は中々理解することが難しい概念ですが、かなり重要なので、頑張って理解しましょう。

ベクトル空間
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