こんにちは、krです。今回は、

な、なにこの意味分からん式…
と行列式の定義式に面食らっている人のために、「行列式の定義」を2次の行列式を使って簡単に説明します。
行列式についてあまり知らない人は、まず「行列式とは?「求め方(計算方法)」「行列式の意味」を分かりやすく解説!」を見た方が良いです。
定義
行列式の定義は以下の通りです。
これ、パッと見じゃ全然何言ってるか分かんないですよね?僕は最初見た時全然分からなくて、適当に読み飛ばしてました(笑)
しかし、この定義の意味が分かれば、なぜ行列式があんな計算式になるのか分かるので、理解しておいて損はありません。
それでは、定義の解説をします!

理解しておくべき用語
行列式の定義を理解するには「置換」を理解していることが大前提になってきます。
置換を理解できていない方は「巡回置換、互換、符号など「置換」の全てをまとめました!」をご覧ください。
そして、行列式の定義で使う置換の用語は以下の通りです。

この置換用語が何となく分かる人向けの記事になっています。
2次の行列式を使って行列式の定義を説明
2次の行列式のとき、定義式は次のようになります。今回はこれを使って行列式の定義を理解しましょう。$n$次のときも大体同じ感じです。
$$det(A) = \displaystyle \sum_{\sigma \in S_{2}} sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)}$$
この式は日本語に直すと、次のような意味になります。
$det(A)$は$S_{2}$に含まれる全ての$\sigma$における$sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)}$を足し合わせた値
ということは、今から次のようなことをやらないといけません。
【ステップ1】置換全体の集合$S_{2}$を求める
【ステップ2】各$\sigma$における$sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)}$の値を求める
【ステップ3】ステップ2の値を全て足し合わせる
各ステップを順番に解説します!

【ステップ1】置換全体の集合$S_{2}$を求める
まず、置換全体の集合$S_{2}$を求めましょう。2文字の置換は以下の2通りしかありません。
$$\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} \qquad \begin{pmatrix} 1 & 2\\ 2 & 1 \end{pmatrix}$$
なので、2文字の置換全体の集合$S_{2}$は
$$S_{2}= \left \{ \varepsilon, \ \begin{pmatrix} 1 & 2\\ 2 & 1 \end{pmatrix} \right \} $$
となります。$\varepsilon$は単位置換です。

ふむふむ
【ステップ2】各$\sigma$における$sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)}$の値を求める
$\sigma = \varepsilon$のとき
単位置換$\sigma = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 1 & 2 \end{pmatrix}$は何も数字が変化しないので、$sgn(\sigma)=\color{red}{1}$になります。
また、単位置換なので、当然$\sigma(1)=1, \ \sigma(2)=2$となり、$a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)}=\color{red}{a_{11} a_{22}}$となります。
よって、
$$sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)} = a_{11} a_{22}$$
です。

な、なんか難しくなってきたよ…
用語を1つ1つ理解していくのが重要です!

$\sigma = \begin{pmatrix} 1 & 2\\ 2 & 1 \end{pmatrix}$のとき
まず、今回の置換$\sigma$は
$$\sigma = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 2 \end{pmatrix}$$
という互換であることが分かります。したがって、$sgn(\sigma)=\color{red}{-1}$となります。
また、$\sigma(1)=2, \ \sigma(2)=1$であるので、$a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)}=\color{red}{a_{12} a_{21}}$となります。
よって、
$$sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)} = -a_{12} a_{21}$$
です。
まとめましょう!

【ステップ3】ステップ2の値を全て足し合わせる
ステップ2より、
$\sigma = \varepsilon$のとき、$sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)} = \color{red}{a_{11} a_{22}}$
$\sigma = \begin{pmatrix} 1 & 2\\ 2 & 1 \end{pmatrix}$のとき、$sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)} = \color{red}{-a_{12} a_{21}}$であるため、
$$det(A) = \displaystyle \sum_{\sigma \in S_{2}} sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)} = a_{11} a_{22}-a_{12} a_{21}$$
となります。
この式は何を表しているか分かりますか?


2次の行列式を求める式っすね!
2次の行列式を解くときに使っていた$a_{11} a_{22}-a_{12} a_{21}$という式がちゃんと定義式から求まることが分かりました。
3次以上の行列式も同じように計算することで、定義式を求めることができます。
なぜ行列式の定義に置換を使うのか?

何で行列式を置換で定義することができるんだ?行列式と置換で全く関係のない概念じゃないの?
と思っている方もいるかもしれません。僕も当時は置換と行列式の関係がいまいちよく分からなくて、何となく流していました。
あれから色々勉強して分かったことなんですが、実は「行列式が何故か置換で定義できる」のではなくて、「行列式をうまく定義するために置換が必要だった」のです。
というのも、元々行列式という概念自体は存在していて、2次の行列式が

となり、3次の行列式が

となることは分かっていたのです。
そして、4次、5次と求めていくと、行列式がある法則に従っていることに気づき、それをうまく数式化するために「置換」の概念が必要だったというわけです。
だから、行列式が定義できるなら、別に「置換」を使わなくても良いんです。ただ、ちょうどいいのが置換しかなかったということですね。
ここをしっかり理解しておくと、行列式を理解しやすくなります。

まとめ
今回は「行列式の定義」について解説しました。
定義を理解するにはまず置換を理解しないといけないので、中々ハードルは高いですが、定義を理解できれば行列式が一気に分かるようになるので、頑張ってください。
最後まで見て頂きありがとうございました!

$n$次正方行列$A$に対し、行列式$det(A)$は以下の式で表される。
$$det(A) = \displaystyle \sum_{\sigma \in S_{n}} sgn(\sigma)a_{1 \sigma(1)} a_{2 \sigma(2)} \cdots a_{n \sigma(n)}$$