こんにちは、くるです!
前回までは「ベクトル空間」の解説をしてきましたが、今回からは新しい「線形写像」という分野について解説していきます。前回の記事「基底と次元とは?例題と合わせて詳しく解説!」
この「線形写像」ですが、線形代数の後半の分野でここまでの話が分かっていないと中々理解できない分野となっているので、「全然分からないよ~(:_;)」って人は今まで勉強したことを一回復習しましょう!
目次
線形写像とは?
そもそも写像って?
「写像?なんですか写像って?」
某氏の発言でも有名なこの写像ですが、確かに一般的な言葉ではなく、数学で主に使われている言葉ですね。
写像は「関数」を言い換えた言葉
では写像って何かって言うと、ズバリ!これです!
例えば、$y = 3x$という関数は写像です。$y = sinθ$という関数も写像です。
つまり、今まで見てきたような様々な関数全てが「写像」であったわけです。
なぜ写像というのか?

じゃあ何で【写像】って名前なんだよ!!!
って思いますよね?
例えば、$y = 3x$という写像(関数)を考えてみましょう。この写像は図のようなことを表しています。

ここで、左側に光源があると考えると、$3x$というのは$x$の影であると考えることが出来ます。
つまり、「$x$が値域に像(影)を写している」と考えられることから、関数のことを「像を写す」という意味で「写像」って言うんです。ちょっと難しいですね…
じゃあ線形って何?
では「線形」って何でしょうか?それは以下のように言い表されます。
例えば、図のようにx軸上の点を考えてみましょう。

$1+1 = 2$となりますが、計算後の$2$もこのx軸上に乗っています。また、$1×3 = 3$となりますが、この$3$もx軸上に乗っています。
つまり、和と定数倍をした結果も同じ直線状に存在するっていうのが、「線形」の意味なんです。
線形写像は「線形 (和と定数倍が可能) な写像 (関数) のこと」である!
ここまでに述べてきたことをまとめると、線形写像は「和と定数倍ができる関数」ってことになりますね!
この和と定数倍ができるってのをもう少し数学っぽく書くと次のような2つの式で表すことが出来ます。
この式を満たすような写像$f$のことを線形写像と呼ぶというわけですね。
行列と線形写像
例えば次のような式を考えてみましょう。
$$f(\boldsymbol{x}) = \begin{bmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{bmatrix}\begin{bmatrix} x_{1} \\ x_{2} \end{bmatrix}$$
「写像=関数」であったので、もちろんこの式も写像ということになります。
さて、この式を変形すると以下の式になります。
$$f(\boldsymbol{x}) = \begin{bmatrix} x_{1} + 2x_{2} \\ 3x_{1} + 4x_{2} \end{bmatrix}$$
この写像が線形写像であるかどうか調べてみましょう。線形写像であるための条件は「和と定数倍ができる」ことでした。まず、
$$\begin{bmatrix} (a+b) + 2(c+d) \\ 3(a+b) + 4(c+d) \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} a + 2c \\ 3a + 4c \end{bmatrix} + \begin{bmatrix} b + 2d \\ 3b + 4d \end{bmatrix}$$
という式が成り立つので、とりあえず和が出来ることが分かります。そして、
$$\begin{bmatrix} (2a) + 2(2b) \\ 3(2a) + 4(2b) \end{bmatrix} = 2\begin{bmatrix} a + 2b \\ 3a + 4b \end{bmatrix}$$
という式も成り立ち、定数倍もできるということが分かります。よって、最初の写像
$$f(\boldsymbol{x}) = \begin{bmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{bmatrix}\begin{bmatrix} x_{1} \\ x_{2} \end{bmatrix}$$
は「和と定数倍ができる」ため線形写像であるといえます。
例題
$$f(\boldsymbol{x}) = \begin{bmatrix} 3x_{1} + 2x_{2} + 1\\ x_{1} + 4x_{2} + 2 \end{bmatrix}$$
解答
$$\begin{bmatrix} 3(a+b) + 2(c+d) + 1\\ (a+b) + 4(c+d) + 2\end{bmatrix} \neq \begin{bmatrix} 3a + 2c + 1\\ a + 4c + 2\end{bmatrix} + \begin{bmatrix} 3b + 2d + 1\\ b + 4d + 2\end{bmatrix}$$
より、線形写像であるための条件を満たさないので、線形写像ではない。
解説
気づいた人もいるかもしれませんが、この問題のように、”定数項“があるような写像は全て線形写像ではありません。
$$f(\boldsymbol{x}) = \begin{bmatrix} 5x_{1} – 4x_{2} + 2\\ 2x_{1} + x_{2}\end{bmatrix}$$
$$f(\boldsymbol{x}) = \begin{bmatrix} 2x_{1} + 2\\ 3x_{1} – x_{2} + 5\end{bmatrix}$$
といった写像は線形写像にはならないのです。なぜなら、解答に述べたように、定数項があると和と定数倍がうまく合わないからです。
また、逆に定数項がない写像は全て線形写像です。
今回はここまで!
最後まで見て頂きありがとうございました!

$f(a + b) = f(a) + f(b)$
$f(ca) = cf(a)$