こんにちは、くるです。今回は「線形性」について簡単に解説します。
線形性とは?
線形性とは簡単に言えば「入力に対する出力の予測が容易」という性質です。
まずは、「線形性」いう言葉が出来た起源を辿りましょう。

線形性の起源
次のような原点を通る直線$y=ax$を考えましょう。

入力$x$を$x_{1}+x_{2}$や$cx_{1}$にしてみると、当たり前ですが次のような式が成り立ちます。
$$f(x_{1}+x_{2})=a(x_{1}+x_{2})$$
$$f(cx_{1})=a(cx_{1})$$
で、これを少し変形してみると、次のような式になることが分かります。
$$\begin{eqnarray} f(x_{1}+x_{2}) &=& a(x_{1}+x_{2})=ax_{1}+ax_{2} \\
&=& f(x_{1})+f(x_{2}) \quad (1) \end{eqnarray} $$
$$f(cx_{1})=a(cx_{1})=c(ax_{1})=cf(x_{1}) \quad (2) $$
すると、この2式より、原点を通る直線は次のような性質を持っていると言えますね。

一見、どんな関数$f(x)$においても成り立ちそうな性質に見えますが、実はこれが成り立つのは「原点を通る直線」だけなんです。
例えば、$f(x)=e^x$の場合、
$$f(x_{1}+x_{2})=e^{x_{1}+x_{2}} \neq e^{x_{1}}+e^{x_{2}} = f(x_{1})+f(x_{2})$$
$$f(cx_{1})=e^{cx_{1}} \neq ce^{x_{1}} = cf(x_{1})$$
であるので、$(1),(2)$式は成り立ちません。
ということで、性質1,2は「原点を通る直線だけに成り立つ特別な性質」なので、この性質のことをまとめて「原点を通る直線の性質=線形性」と呼びます。線形とは直線という意味です。

これが「線形性」という言葉の起源です

原点を通らない直線は線形性を持たないの?
線形性を持ちません。
例えば、$f(x)=2x+1$という関数では、
$$\begin{eqnarray}f(x_{1}+x_{2}) &=& 2(x_{1}+x_{2})+1 \\
&=& 2x_{1}+2x_{2}+1 \\
&\neq& (2x_{1}+1)+(2x_{2}+1) \\
&=& f(x_{1})+f(x_{2}) \end{eqnarray}$$
となり、性質1を満たさないのです。
色々な線形性
元々「原点を通る直線」だけが持つ特別な性質として名付けられた「線形性」ですが、これはあくまでも「関数」に限ったときの話で、少し線形性の範囲を広げてみると、以外なものに線形性と同じような性質があることが分かります。
その以外なものとは、「微分」と「積分」です。
微分
微分では以下の式が成り立ちます。
$$(x_{1}+x_{2})’=x_{1}’+x_{2}’=(x_{1})’+(x_{2})’$$
$$(cx_{1})’=cx_{1}’=c(x_{1})’$$
したがって、微分では次のような性質が成り立つことが分かります。

これって、原点を通る直線の「線形性」と同じような性質ですよね?
なので、原点を通る直線の「線形性」の名を借りて、この微分の性質も「線形性」と呼ぶのです。
積分
積分では以下の式が成り立ちます。
$$\displaystyle \int_{a}^{b} (x_{1}+x_{2}) dx = \displaystyle \int_{a}^{b} x_{1} dx + \displaystyle \int_{a}^{b} x_{2} dx$$
$$\displaystyle \int_{a}^{b} cx_{1} dx = c\displaystyle \int_{a}^{b} x_{1} dx$$
したがって、積分では次のような性質が成り立つことが分かります。

これも原点を通る直線の「線形性」と同じような性質です。
なので、微分と同じように、原点を通る直線の「線形性」の名を借りて、この積分の性質も「線形性」と呼びます。
線形性の何が良いのか?

結局線形性って何なんすか?線形性を持ってると何かいいことがあったりするんすか?
恐らく、皆さんも同じことを思われたのではないでしょうか。線形性って何が良いのでしょう?
それの答えはこちらです。
例えば、$f(x)=2x$という関数では、出力を簡単に予測できますよね。$f(123)=246$のように。
では、$f(x)=x^3+x^2+x$はどうでしょう?$f(123)$がどのような値になるか予測できますか?できないですよね。
これが線形性を持つことのメリットです。
そもそも線形性を持つとは、

という性質が成り立つことでしたから、そりゃ出力の予測も容易ですよね。
逆に、線形性を持たない「非線形」なものは一般的に出力を予測するのが非常に困難で、人間の力では扱いきれません。
つまり、線形性を持っているものは非線形なものに比べて理論構築が圧倒的に楽なんです。
だから、多くの学問で「線形性」が重要視されていて、世の学者たちは「出来るだけ線形性が成り立つようなものを考えたい」って思ってるんです。
お分かりいただけたでしょうか?


なんとなくわかったっす!
まとめ
今回は「線形性」について説明しました。
線形性は抽象的で難しい概念ですが、線形代数や電気回路などでかなり重要な性質となっているので、頑張って理解しましょう!
線形性が成り立てば出力の予測が簡単になる