こんにちは、krです。今回は

行列式って何だ…?行列と何が違うんだ…?
と頭が疑問で埋め尽くされている方のために「行列式とは何者なのか?」「行列式の求め方(計算方法)」「行列式の意味」を分かりやすく解説します!
行列式とは?
行列式とは簡単にいえば「行列から計算される特別な値」です。
行列$A$の行列式は$det(A)$や$|A|$という記号で表されます。
例えば、$A=\begin{bmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{bmatrix}$の行列式は$\begin{vmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{vmatrix}$と表されます。以下のように書いても同じ意味になります。
$$det(A), \quad det\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix}, \quad |A|$$
ちなみにこの行列式の値は$-2$です。行列式の計算方法は後ほど説明します。
行列との違い

行列式って行列と似てるし、行列と同じようなもんなんすかね~?
と思っているかもしれませんが、まっっったく違います。
何が違うかというと、行列はただ数字をまとめたものですが、行列式は決まった「値」です。$2$とか$3$みたいな値を持つのです。
行列のすぐ後に出てくるので、行列で習った「掃き出し法」「簡約化」「行列の積」などが行列式でも出来ると勘違いしがちですが、行列で習った知識は全く必要ないので、今は忘れてください。
イメージとしては、行列式は「行列の性質のうちの1つ」みたいなもので、親子のような関係です。

まぁ、まったく違うといったら言い過ぎかもしれませんが、とにかく行列とは別物なんだと理解してください。
行列式の求め方
行列式の求め方はかなり特殊
まず、もう既に知っていると思いますが、行列式の求め方はかなり特殊です。
恐らく皆さんの教科書には、次のような「行列式の定義」が書かれていることでしょう。
ただ、はっきり言っておくと、
行列式の定義は理解しなくてOK
です。だから、こんな記号だらけの式は無視してとりあえず計算方法を覚えましょう。
もし、行列式の定義を理解したいなら、「行列式の定義を分かりやすく解説!」の記事を読むことをおすすめしますが、とにかく難しいので頑張ってください。
行列式の求め方について具体的に説明していきます!

2次の行列式の求め方
2次の行列式は以下のように定義されています。

2次の行列式は、次のようにクロスするようなイメージで計算します。

例えば、$\begin{vmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{vmatrix}$は次のように求めます。

例えば、$\begin{vmatrix} 1 & -2 \\ 3 & 4 \end{vmatrix}$という行列式を求めるとき、$-2$のせいで、次のように「-」を付けるのを忘れてしまいがちです。気を付けましょう。
$$\begin{vmatrix} 1 & -2 \\ 3 & 4 \end{vmatrix} = 1 \times 4 -2 \times 3=-2$$
ではなく、正しくは
$$\begin{vmatrix} 1 & -2 \\ 3 & 4 \end{vmatrix} = 1 \times 4 + 2 \times 3 = 10$$
です。
3次の行列式の求め方
3次の行列式の求め方は2次の行列式よりもかなり厄介です。3次の行列式は以下のように定義されています。


こ、こんなの覚えられないっすよ~~(泣)
簡単に覚えられる方法があるので安心してください!

その名も「サラスの方法」です。
サラスの方法
例えば、次のような行列式をサラスの方法を使って求めてみます。
$$\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 2 & 2 & 2 \\ 3 & 3 & 3 \end{vmatrix}$$
サラスの方法はまず以下のように+成分と-成分を計算をします。それぞれをセットで覚えてくださいね。

そして、+成分と-成分を足し合わせます。すると、
$$\begin{vmatrix} 1 & 1 & 1\\ 2 & 2 & 2\\ 3 & 3 & 3 \end{vmatrix} = 18-18 = 0$$
となり、この行列式は$0$ということが分かります。
これがサラスの方法です。
なぜこんなややこしい定義になっているのか疑問に思うかもしれませんが、最初からそれを理解するのは難しいので、今はとりあえず計算方法を覚えましょう。
3次の行列式も「-」を付けるのを忘れやすいです。
例えば、以下のように「-」がいっぱい付いている行列式は焦って計算すると高確率で間違えます。僕も何度間違えたか分かりません。慎重に計算しましょう。
\begin{vmatrix} 1 & -1 & 1 \\ -2 & 2 & -2 \\ -3 & 3 & -3 \end{vmatrix}
4次以降の行列式の求め方
4次以降の行列式は、2次や3次の行列式のような公式的なものはありません。あったとしても項数が24個になるので、中々覚えるのも大変です。
ではどうやって解くかというと、「余因子展開」という手法を使うのです。
簡単に言うと、「四次行列式を三次行列式の和に変換し、その三次行列式をサラスの方法で解く」といった感じです。
この余因子展開を使えば、五次行列式でも六次行列式でも求めることが出来ます。(めちゃくちゃ大変ですけどね)
4次の行列式の解き方を詳しく知りたい方は「4次の行列式の解き方を簡単に解説!」をご覧ください。
余因子展開について詳しく知りたい方は「余因子展開のやり方を分かりやすく解説!」をご覧ください。
行列式の意味
行列式は何のために導入されたのか?
まず、そもそも行列式とは何なのか。なぜこんなものが導入されたのかについて説明します。
行列式は元々「連立方程式がただ1つの解を持つかどうかを判定するための道具」として導入されました。
例えば、次のような連立方程式を考えましょう。
$$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a_{11}x_{1} + a_{12}x_{2} = b_{1} \\ a_{21}x_{1} + a_{22}x_{2} = b_{2} \end{array} \right. \end{eqnarray}$$
行列で表すと次のようになります。
$$\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x_{1} \\ x_{2} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} b_{1} \\ b_{2} \end{pmatrix}$$
この連立方程式の解は次のような式で与えられます。
$$ x_{1} = \frac{b_{1}a_{22}-a_{12}b_{2}}{a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}}$$
$$ x_{2} = \frac{a_{11}b_{2}-b_{1}a_{21}}{a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}}$$
でも、分母は$0$じゃダメなので、「$a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21} \neq 0$」という条件が必要ですよね?
ということは「$a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}$」という式は連立方程式がただ1つの解を持つかどうかを判定できる凄く重要な式なわけです。
そしたら、名前があった方が説明しやすいから「行列式」という名前にしよう!、というのが行列式が導入された歴史です。
こんなふうに最初は連立方程式がただ1つの解を持つかを判定するための道具に過ぎなかったのですが、研究を進めると行列式が色々なところに応用可能であることが分かり、線形代数の一大分野にまで成長しました。
図形的な意味
行列式は図形的には「面積拡大倍率」という意味を持っています。
なぜそんな意味を持つのかを段階的に説明していきます!

① ベクトルが作る面積
まず、次のような2つの単位ベクトルを考えましょう。
$$\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$$
この単位ベクトルの上の成分を$x$座標、下の成分を$y$座標に対応させると、次のように表すことができます。

青いベクトルが$\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$、赤いベクトルが$\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$を表しています。
今回はこの赤と青のベクトルが作る「面積」が重要になります。
② 行列をベクトルに掛ける
次に、先ほどの単位ベクトルに行列$A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$を掛けます。
すると、
$$\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a \\ c \end{pmatrix}$$
$$\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} b \\ d \end{pmatrix}$$
となりますよね。
この2つのベクトルを図示すると、次のようになります。

つまり、「行列をベクトルに掛けるとベクトルが移動する」わけです。
③ 移動後のベクトルが作る面積
移動後の赤と青のベクトルが作る平行四辺形の面積の大きさを求めてみましょう。
次のように面積$(a+b)(c+d)$の大きな四角から平行四辺形の周りの面積を引くことで求めます。

図より、赤と青のベクトルが作る平行四辺形の面積の大きさは、
$$\begin{eqnarray} (a+b)(c+d)-2bc-ac-bd &=& ac+bc+ad+bd-2bc-ac-bd \\
&& \\
&=& ad-bc \end{eqnarray}$$
したがって、面積は$ad-bc$です。
もし、最初の正方形の面積が$2$の場合、行列$A$を掛けると面積は$2(ad-bc)$になります。
同じように、最初の正方形の面積が$3$の場合、面積は$3(ad-bc)$になります。
つまり、「行列$A$を掛けると面積が$ad-bc$倍になる」のです。
④ 行列は面積拡大倍率を表す
単位ベクトルを移動させるのに使った行列$A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$の行列式は
$$\begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix}=ad-bc$$
です。これって先ほどの「行列$A$を掛けることによる面積拡大倍率」と同じですよね?
ということは、行列式は「行列を掛けることによる面積拡大倍率」を表しているというわけです。
わざわざ面積を計算しなくても、行列式を調べるだけで面積が分かるというのが便利なんですよね~。

なんとなく分かった気がします!
まとめ
今回は「行列式とは何者なのか?」「行列式の求め方(計算方法)」「行列式の意味」について解説しました。行列式の求め方は覚えていて当たり前なので、絶対に習得するようにしましょう。
$$det(A) = \displaystyle \sum_{\sigma \in S_n} sgn(\sigma)a_{1}\sigma_{(1)}a_{2}\sigma_{(2)} \cdots a_{n}\sigma_{(n)}$$