こんにちは、krです。今回は「余因子行列」について簡単に解説します。
余因子行列とは?
余因子行列は「各成分における余因子を行列にまとめて転置した行列」です。
まずは、余因子について説明します!

余因子って何?
余因子は簡単に言えば「行列の各成分が持つ特別な値」です。
次の行列を使って余因子の説明をします。
$$\begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 2 & 2 & 2 \\ 3 & 3 & 3\end{pmatrix}$$
余因子を求めるときは、まずどの成分に注目するかを決めます。今回は$(1,1)$成分の「$1$」に注目しましょう。
最初に、注目している数字の十字方向の数字を消します。

次に、残っている部分を成分とする行列式を作ります。この行列式を「小行列式」といいます。

そして、注目している数字が$i$行$j$列であるとき$(-1)^{i+j}$を小行列式の係数とします。
今回の「$1$」は$1$行$1$列なので、$(-1)^{1+1}=1$より、次のようになります。

この「$0$」が$(1,1)$成分の「$1$」における「余因子」です。

なるほどね~
余因子行列の求め方
それでは、余因子行列を求める手順を説明します。例として、以下の行列を使いましょう。
$$\begin{pmatrix} 1 & 0 & 2 \\ 3 & 2 & 1 \\ 2 & 3 & 0 \end{pmatrix}$$
【ステップ1】各成分の余因子を求めて行列にまとめる
余因子行列は「各成分における余因子を行列にまとめて転置した行列」なので、まずは各成分における余因子を求めないといけません。
つまり、以下のようなことを全ての成分において行うわけです。

余因子を求めたら、余因子をまとめて次のような行列を作ります。$i$行$j$列成分の余因子を$i$行$j$列成分としています。
$$\begin{pmatrix} -3 & 2 & 5 \\ 6 & -4 & -3 \\ -4 & 5 & 2 \end{pmatrix}$$
【ステップ2】転置する
次に、ステップ1で求めた行列を転置します。転置すると次のようになります。
$$\begin{pmatrix} -3 & 6 & -4 \\ 2 & -4 & 5 \\ 5 & -3 & 2 \end{pmatrix}$$
これが求める「余因子行列」です。
余因子行列と逆行列

余因子行列ってどこで使うんすか?
逆行列を求めるときに使います。

余因子行列を使えば、次のような公式で逆行列を求めることができるのです。
例えば、
$$\begin{pmatrix} 1 & 0 & 2 \\ 3 & 2 & 1 \\ 2 & 3 & 0 \end{pmatrix}$$
の逆行列を求めてみましょう。行列式と余因子行列は
$$det(A)=\begin{vmatrix} 1 & 0 & 2 \\ 3 & 2 & 1 \\ 2 & 3 & 0 \end{vmatrix}=7$$
$$\tilde{A}=\begin{pmatrix} -3 & 6 & -4 \\ 2 & -4 & 5 \\ 5 & -3 & 2 \end{pmatrix}$$
なので、
$$\begin{eqnarray} A^{-1} &=& \frac{1}{7} \begin{pmatrix} -3 & 6 & -4 \\ 2 & -4 & 5 \\ 5 & -3 & 2 \end{pmatrix} \\
&=& \begin{pmatrix} -\frac{3}{7} & \frac{6}{7} & -\frac{4}{7} \\ \frac{2}{7} & -\frac{4}{7} & \frac{5}{7} \\ \frac{5}{7} & -\frac{3}{7} & \frac{2}{7} \end{pmatrix} \end{eqnarray}$$
です。
もっと詳しく知りたい方は「逆行列の求め方【行列式編】」をご覧ください。
まとめ
今回は「余因子行列」について簡単に解説しました。
余因子行列は逆行列を求めるときぐらいにしか使いませんが、かなり重要な概念なので、しっかりと理解しておきましょう。
行列$A$が正則行列ならば、$A$の逆行列を$A^{-1}$、$A$の行列式を$det(A)$、$A$の余因子行列を$\tilde{A}$としたとき、 以下の式が成り立つ。
$$A^{-1} = \frac{\tilde{A}}{det(A)}$$