逆行列とは?「定義・公式・2通りの求め方・存在条件・性質」など逆行列のすべてを解説!

分かりやすい逆行列

こんにちは、くるです。今回は

逆行列って…何?

という方のために「逆行列の定義・公式・2通りの求め方・性質」といった逆行列のすべてを分かりやすく解説します。

逆行列とは?

逆行列とは簡単にいえば「逆数みたいなもの」です。

例えば、$2$の逆数って$\frac{1}{2}$ですよね?それと同じように、行列$A$の逆行列は$\frac{1}{A}$なんです。

ただ、$\frac{1}{A}$と書いてしまうと「数を行列で割る」という意味の分からないものになるので、実際には逆行列は$A^{-1}$という記号で表されます。

逆数は元の数と掛け合わせたら$1$になりますが、逆行列は元の行列と掛け合わせると「単位行列$E$」になります。単位行列は行列の世界における「$1$」みたいなものです。

定義

逆行列のちゃんとした定義は次の通りです。

逆行列の定義

$n \times n$正方行列$A,B$と$n \times n$単位行列$E$において、

$$AB=BA=E$$

という式が成り立つとき、行列$B$を行列$A$の「逆行列」と呼ぶ。逆に、行列$A$は行列$B$の「逆行列」でもある。

例えば、

$$A = \begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix}, \quad B=\begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}$$

という2つの行列において、

という式が成り立つので、行列$B$は行列$A$の逆行列であり、行列$A$は行列$B$の逆行列です。

補足

逆行列は1つしか存在しません。$2$の逆数が$\frac{1}{2}$しかないのと同じです。

$2 \times 2$ 逆行列の公式

$A=\begin{bmatrix} a & b \\ c & d \end{bmatrix}$の逆行列は次の公式で計算できます。

$2 \times 2$ 逆行列の公式

$$A^{-1}=\frac{1}{ad-bc} \begin{bmatrix} d & -b \\ -c & a \end{bmatrix}$$

これは覚えておくと便利かもしれません。

$3 \times 3$や$4 \times 4$の逆行列の公式も一応ありますが、とても覚えられるようなものではありません。

それでは、$3 \times 3$以上にも対応できる逆行列の求め方を説明します。

先生
先生

逆行列の求め方

逆行列の求め方には

方法1:掃き出し法を使う
方法2:余因子・行列式を使う

という2つの方法があります。

方法1:掃き出し法を使う

掃き出し法」を使って逆行列を求める手順はザックリと説明すると次の通りです。

手順

① 単位行列を右側にくっつける
② 簡約化
③ 単位行列を左側から切り離す

例1 $2 \times 2$行列の場合

$$A = \begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix}$$

という行列の逆行列を求めてみます。

① まず、単位行列を右側にくっつけます。

$$\begin{eqnarray} A = \begin{bmatrix} \begin{array}{cc:cc} 1 & -1 & 1 & 0 \\ 2 & -3 & 0 & 1 \end{array} \end{bmatrix} \end{eqnarray}$$

② 次に簡約化を行います。単位行列も一緒に簡約化することに注意してください。

③ 最後に左側の単位行列を切り離します。

$$\begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}$$

これが行列$A$の逆行列です。

例2 $3 \times 3$行列の場合

次は

$$A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & -1 \\ 2 & 3 & 2 \\ -3 & -3 & 0 \end{bmatrix}$$

という行列の逆行列を求めてみます。

① まず、単位行列を右側にくっつけます。

$$\begin{eqnarray} A = \begin{bmatrix} \begin{array}{ccc:ccc} 1 & 2 & -1 & 1 & 0 & 0 \\ 2 & 3 & 2 & 0 & 1 & 0 \\ -3 & -3 & 0 & 0 & 0 & 1 \end{array} \end{bmatrix} \end{eqnarray}$$

② 次に簡約化を行います。単位行列も一緒に簡約化することに注意してください。

③ 最後に左側の単位行列を切り離します。

$$\begin{bmatrix} -\frac{2}{3} & -\frac{1}{3} & -\frac{7}{9} \\ \frac{2}{3} & \frac{1}{3} & \frac{4}{9} \\ -\frac{1}{3} & \frac{1}{3} & \frac{1}{9} \end{bmatrix}$$

これが行列$A$の逆行列です。

コツ

コツは「掃き出し法をとにかく丁寧にやること」です。

途中の計算を省略しようとすると高確率で計算ミスをします。とくにテストでは焦る気持ちは分かりますが、1手ずつ正確に進めましょう。

逆行列が求まる理由

くるる
くるる

そもそも、何で掃き出し法で逆行列が求まるんすか?

例えば、

$$\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_{1} \\ x_{2} \end{bmatrix}=\begin{bmatrix} 1 \\ 0 \end{bmatrix}$$

という連立方程式って掃き出し法で解くことができますよね?こんなふうに

同じように、

$$\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_{1} & x_{2} \\ x_{3} & x_{4} \end{bmatrix}=\begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix}$$

という式も掃き出し法で解くことができるんです。

ただ少し違うのは、先ほどの場合は1つの連立方程式を解いているだけでしたが、こっちは2つの連立方程式を同時に解いているんです。

そして、この計算で求まる$\begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}$が逆行列ですよね。

つまり、掃き出し法で逆行列が求まるのは、「連立方程式を掃き出し法で解いているだけだから」です。

方法2:余因子行列・行列式を使う

逆行列は「余因子行列」と「行列式」を使った次のような公式で求めることもできます。

逆行列を求める公式

行列$A$の行列式を$det(A)$、余因子行列を$\tilde{A}$とすると、逆行列$A^{-1}$は次のような式で与えられる。

$$A^{-1} = \frac{1}{det(A)}\tilde{A}$$

例1 $2 \times 2$行列の場合

$$A = \begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix}$$

という行列の逆行列を公式を使って求めてみます。

まず、$det(A)=-3+2=-1$は簡単に分かりますね。

次に、余因子行列を$\begin{bmatrix} \tilde{a}_{1} & \tilde{a}_{2} \\ \tilde{a}_{3} & \tilde{a}_{4} \end{bmatrix}$とすると、余因子行列は次のように求められます。

よって、公式より、

$$\begin{eqnarray} A^{-1} &=& \frac{1}{-1} \begin{bmatrix} -3 & 1 \\ -2 & 1 \end{bmatrix} \\
&& \\
&=& \begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix} \end{eqnarray}$$

となり、逆行列が求まりました。

例2 $3 \times 3$行列の場合

$$A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & -1 \\ 2 & 3 & 2 \\ -3 & -3 & 0 \end{bmatrix}$$

という行列の逆行列を公式を使って求めてみます。

まず、$det(A)=6-12-9+6=-9$ですね。

次に、余因子行列を$\begin{bmatrix} \tilde{a}_{1} & \tilde{a}_{2} & \tilde{a}_{3} \\ \tilde{a}_{4} & \tilde{a}_{5} & \tilde{a}_{6} \\ \tilde{a}_{7} & \tilde{a}_{8} & \tilde{a}_{9} \end{bmatrix}$とすると、 余因子行列は次のように求められます。

よって、公式より、

$$\begin{eqnarray} A^{-1} &=& \frac{1}{-9} \begin{bmatrix} 6 & 3 & 7 \\ -6 & -3 & -4 \\ 3 & -3 & -1 \end{bmatrix} \\
&& \\
&=& \begin{bmatrix} -\frac{2}{3} & -\frac{1}{3} & -\frac{7}{9} \\ \frac{2}{3} & \frac{1}{3} & \frac{4}{9} \\ -\frac{1}{3} & \frac{1}{3} & \frac{1}{9} \end{bmatrix} \end{eqnarray}$$

となり、逆行列が求まりました。

コツ

コツは「一気に余因子行列を作ろうとせずに、ちゃんと余因子行列の1個前の状態の行列を作ってから転置させること」です。

いきなり余因子行列を作ろうとすると大体どこかミスります。

逆行列が存在する条件

実はどんな行列でも逆行列が存在するわけではなく、逆行列が存在するためには「正方行列かつ行列式が$0$でない」という条件を満たす必要があります。

「なぜ正方行列でない行列・行列式が$0$の行列に逆行列がないのか」を説明します。

正方行列でない行列

正方行列じゃない行列は、掃き出し法を使って行列式を求めようとしても絶対に単位行列にならないので、逆行列がありません。

例えば、以下のような行列は逆行列を持ちません。

$$\begin{bmatrix} 2 & 5 \\ 1 & 2 \\ 3 & 0 \end{bmatrix} \quad \begin{bmatrix} 1 & 0 & 2 & 2 \\ 2 & 3 & 0 & 4 \\ 2 & 1 & 3 & 3\end{bmatrix}$$

行列式が0の行列

もし正方行列であっても、行列式が$0$の場合、逆行列の公式$A^{-1} = \frac{1}{det(A)}\tilde{A}$において、分母が$0$になってしまうため、逆行列が存在しません。

例えば、以下のような行列です。

$$\begin{bmatrix} 1 & 3 \\ 2 & 6 \end{bmatrix} \quad \begin{bmatrix} 4 & 2 & 3 \\ 2 & 0 & 0 \\ 3 & 0 & 0 \end{bmatrix}$$

ここからは逆行列の性質について解説します!

先生
先生

逆行列の性質

逆行列の数式的な性質を説明します。なお、証明はありません。

ここでは、例として行列$A=\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix}$、その逆行列 $A^{-1}=\begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}$を使います。

$(A^{-1})^{-1}=A$

逆行列の逆行列=元の行列」という性質があります。

実際に成り立つか確かめてみましょう。

$A^{-1}=\begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}$なので、これの逆行列を求めます。

となり、元の行列に戻るため、$(A^{-1})^{-1}=A$が成り立つと分かります。

$(AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1}$

行列$A×B$の逆行列=$B$の逆行列$×A$の逆行列」という性質があります。

行列$B=\begin{bmatrix} 1 & -3 \\ -1 & 4 \end{bmatrix}$、その逆行列$B^{-1}=\begin{bmatrix} 4 & 3 \\ 1 & 1 \end{bmatrix}$を使って、実際に成り立つかどうかを確かめてみましょう。

$(AB)^{-1}$

$$AB=\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} 1 & -3 \\ -1 & 4 \end{bmatrix}=\begin{bmatrix} 2 & -7 \\ 5 & -18\end{bmatrix}$$

なので、

より、

$$(AB)^{-1}=\begin{bmatrix} 18 & -7 \\ 5 & -2 \end{bmatrix}$$

$B^{-1}A^{-1}$

$$B^{-1}A^{-1}=\begin{bmatrix} 4 & 3 \\ 1 & 1 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}=\begin{bmatrix} 18 & -7 \\ 5 & -2 \end{bmatrix}$$

よって、$(AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1}$が成り立つと分かります。

補足

$(AB)^{-1}=A^{-1}B^{-1}$は一般的には成り立ちません

間違えて覚えがちなので、注意してください。

$(A^{T})^{-1}=(A^{-1})^{T}$

転置行列の逆行列=逆行列の転置行列」という性質があります。

実際に確かめてみましょう。

$(A^{T})^{-1}$

$$A=\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix}$$

なので、

$$A^{T}=\begin{bmatrix} 1 & 2 \\ -1 & -3 \end{bmatrix}$$

となります。この行列の逆行列は、

より、

$$(A^{T})^{-1}=\begin{bmatrix} 3 & 2 \\ -1 & -1 \end{bmatrix}$$

$(A^{-1})^{T}$

$A^{-1}=\begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}$なので、

$$(A^{-1})^{T}=\begin{bmatrix} 3 & 2 \\ -1 & -1 \end{bmatrix}$$

よって、$(A^{T})^{-1}=(A^{-1})^{T}$が成り立つと分かります。

$|A^{-1}|=\frac{1}{|A|}$

逆行列の行列式=1/行列式」という性質があります。

実際に成り立つか確かめてみましょう。

$|A^{-1}|$

$A^{-1}=\begin{bmatrix} 3 & -1 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}$なので、

$$|A^{-1}|=-3+2=-1$$

$\frac{1}{|A|}$

$A=\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ 2 & -3 \end{bmatrix}$なので、

$$\frac{1}{|A|}=\frac{1}{-3+2}=-1$$

よって、$|A^{-1}|=\frac{1}{|A|}$が成り立つと分かります。

まとめ

今回は「逆行列の定義・公式・2通りの求め方・性質」について解説しました。

逆行列は意味が分からなくてもとりあえず求められるようにはしておくべきなので、計算方法をしっかりと頭にインプットしておきましょう。

お疲れ様でした!

先生
先生
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